2009年1月2日金曜日

日本の統治構造②(資本主義と自由関連)

本書のテーマは日本の統治構造と、その改革への提言といったところでしょうが、どこにインパクトを感じたのか。

日本の政策決定、実行のプロセスを簡潔に説明しているという点です。

前回、赤字で強調しましたが、日本の省庁は、監督する業界を代表して政策立案を行い、監督する業界を通じて政策実行を行うというトコです。これ、官僚が業界サイドに立っているだとか、既得権者を守るばかり、だとか、それは天下り先確保のためだ、と指摘されることは多いのですが、本書はそうした現象面だけでなく、どう行われているのか、なぜ政治がそうした官僚のビヘイビアを修正できないのか、を説明しています。


官僚が規制緩和に反対するのは、権限を手放すことは組織の存在意義を小さくすること、予算を削られること、天下りを減らすこと、につながる、とかいう、単純な官僚悪人論は、やはりムリがありますな。

そうではなくて、彼らの存立基盤、支持基盤(省庁代表制であるので支持基盤を持っている)が業界団体なのだと理解すれば、非常に良くわかる。業界から嫌われたら、その部局は評価されない。すばらしいお役人だ、と監督する業界から支持されてこそ出世できる。


専修学校に進出しようとして認可を区にもらいに行くと、区の担当者は区の既存の専修学校の業界団体の事前了解をもらう必要があると言ったそうです。その団体の理事長に会いに行くと、マーケットの規模からしてこれ以上新規の学校を受け入れる余裕はないとして断られたそうです。業界内で申しあわせてTACの参入を阻んでいたそうです。ある種の談合ですね。 

これは区のお役人で、スケールがちょっと違いますがね。

著者は特にこうした点を批判しているわけではありません。頭デッカチに恣意的に国民を支配しているのではなく、民意の吸収ルートを持っている、ないしは、業界の意向に縛られて行動している、という意味でむしろ好意的に捉えている節もあります。

著者の主張のポイントとは違っているかも知れませんが、本書でプロセスが明らかになることによって、じゃあ、どうしたら良いのかを具体的に考えることができるようになりますな。

批判ばかりしていては、問題は解決しないわけですが、どうすればよいのか。

①各省庁の支持基盤、存立根拠を、監督する業界から切り離し、緊張関係を持たせること
②各省庁の支持基盤、存立根拠を、監督する業界以外の場に構築すること

この2つでしょうね。

官僚を批判しても仕方ない感じがしますな。むしろ、きちんと支える必要があるんでしょうな。監督する業界からそっぽを向かれたら何もできない状況を放置したままでは何を変えてもどうにもならなくて、もっと別に彼らを支える仕組み、そう、国民全体で支える仕組みが必要ですね。それがあって初めて、特定の既得権者だけでない、国民全体にとってあるべき政策が出てくるんでしょうな。


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