2009年1月2日金曜日

日本の統治構造①(資本主義と自由関連)

本書は日本の統治構造を分析した本で、私としてはここ最近に読んだ本では一番インパクトを感じました。まず、ざっとその内容をご紹介しておきますと、

①誤解される議院内閣制

議会と権限を分けあう大統領制と異なり、議院内閣制は本来強いリーダーシップを発揮できる制度なのだが、長く政権交代がなかったため、また閣僚も派閥推薦で選ばれて、派閥代表の位置づけとなっていて、首相自身で閣僚を選べない(小泉さんは例外)。かつ制度的にも首相権限が弱いということから、日本では誤解を生じた。本来は党総裁を押し立てて選挙にのぞみ、勝った政党が内閣を組織する。議会と大統領に権力が分散する大統領制よりはるかにリーダーシップを発揮しやすいはずだ、っていうんですね。

②官僚内閣制
日本では、首相権限が弱く、内閣総理大臣が上位の権威を持たないのであらかじめ官僚が根回しの上、異論の無かったものだけが閣議決定される。各大臣もポスト配分の関係から1年程度と短期交代で、十分政策を理解する間もなく官僚の振り付けに従うばかり。かくして、各大臣は各省庁の代表者として振舞うことに。各大臣は国民の代表ではなく、官僚を代表する形となり、官僚内閣制と呼ぶ。

③省庁代表制

省庁は積み上げ方式で意思決定を行う。稟議システムで長い時間をかけて反対の起こらないようにするが、時間がかかり大きな方針転換には向かない。ボトムアップで政策現場に近いところから発議するためスムーズに政策が行われるメリットもあるにはあるが、だから大胆な発想は生まれにくい。積み上げられた各政策の総合調整も行われるが、あくまで微調整。

各省庁は業界団体や関連の外郭団体を多く抱え、政策コミュニティを形成。各省庁は彼らの政策要請を吸い上げて政策を立案する。また、政策実施も、そうした業界団体など、監督する業界を通じて行われる。その意味で、各省庁は、監督する業界を代表しているとも言え、これを省庁代表制と呼ぶ。

国民は(政策コミュニティに属することで)投票や政治への市民参加という形をとらず行政に直接働きかけて政策実行に関与するルートを持つことができる。

欧米で見られるような、規制する側、規制される側という対立関係が弱い。対立関係というよりむしろ政策立案、政策実施を一部民間と共有することで融合関係が見られる。

④官僚化する与党
党本部が立派。党の部会で議員があらかじめ詳細まで議論を尽くす。官僚も事前説明にやってくる。族議員と呼ばれる有力議員には事前根回しを行う。政府の提出する法案は党の総務会で承認されてから閣議にかけられる。すでに国会提出された際には異論がない状況。かくして国会審議は儀式となる。野党との論戦のみ。すでに党で細部まで積めているので、修正にも応じられない。

与党で実力者となるには、勉強して族議員となり官僚に影響力を行使できるようになる必要がある。かくして、政治家も官僚的に細かな政策をベースに行動するようになり、官僚的政治家(行政的政治家)となってしまい、民意集約に大胆に動く政治家が減ってくる。行政運営や政策実施に関心を集中させてしまい、制度改変や政策間調整といった大がかりな政治に関心を失ってしまう。

⑤結論

本来の議院内閣制の意義を取り戻し、強いリーダーシップを発揮できるようにし、本来の国民のための政治を取り戻すべき。選挙で選ばれたときの総裁を首相にすべき。選挙抜きで総裁選びを党の事情でやるのもまずい、等々。







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